気づけば刺すような寒さ。ここ1、2週間の気温の低下には瞠目する。年の瀬の近づきも感じつつ久々にティップランエギングである。水温は19℃。大潮の潮周り。干潮時刻がちょうど12時。午後、上げ潮へ転流の頃合いで出船する。やや、吹いている。北東の風は冬らしさを物語る。頬に堪えるが、この釣りは「やや吹いている」くらいがちょうどよい、とされる。なぜなら、「ドテラ」に流すことで目ぼしい瀬を広範囲に隈なく探れるからだ。風と一体となることがこの釣りのキモと言っても過言ではないだろう。風と一体となる。この感覚が人の本能を呼び起こす。人々は斯くして大海原に獲物を追い求めていたことであろう。
タックルは写真のとおりである。この写真を見て、お詳しい読者のみなさんはなにかお気づきになるのではないだろうか。
そう。ティップランエギングの専用タックルではないのである。ロッドは一つテンヤ真鯛の竿を流用した。いつも、こうしている。理由は二つある。一つは技術上の理由である。一つテンヤの竿はティップランのそれに比べれば少し長いのであるが、竿の調子、すなわち硬さはティップランエギングに馴染む。したがって、一つテンヤロッドはティップランエギングへの流用に十分耐えうるものである。もう一つは、筆者の性格上の理由とでも表現したらよいだろうか。最初の理由に通ずるところがあるのであるが、一つテンヤロッドで十分流用が可能なのであるから、ティップランエギングロッドを揃えるというところまで気分が高まらないのである。生来、「もったいない症候群」なのかもしれない。しかし、よく考えてみると、それも違う気がする。なぜなら筆者は趣味として魚を釣るために船を買ったのだ。これは一つの観点、すなわち釣りは手軽に楽しむ趣味であるという点からは、正気の沙汰とは言い難い、とも言えそうである。ティップランエギングロッドを買うのはもったいなく感じ、ボートを買うのはもったいなくない。これはどういう感情からの帰結か。自分でも不思議である。あるいは別腹とかそういった類の感覚なのか。
リールは年季の入ったシマノステラである。2010年モデルである。番手は2500番。現役だ。初めて買ったステラである。いわゆるヌルヌルとした巻き心地は健在だ。今でも最新機種のツインパワーに勝る巻き心地である、と思う。愛着もあり、大事に使っている。
本線はPE0.8号。潮への馴染みもよく、強度も申し分ない。メインラインの王道である。
思いのほか荒天に転じ短時間の釣行となった。
あいにく釣果には恵まれなかった。
風と一体になる喜びを再認識しつつ次回釣行への夢を膨らませる。