突然だが読者の皆さんはマイクロプラスチックをご存知だろうか。マイクロプラスチックは以下のようなものであり、環境汚染物質である。wikipediaの記述を引用する。
マイクロプラスチック(英: microplastics)は、(生物物理学的)環境中に存在する微小なプラスチック粒子であり、特に海洋環境において極めて大きな問題になっている[1]。一部の海洋研究者は1mmよりも小さい顕微鏡サイズの全てのプラスチック粒子[2]と定義しているが、現場での採取に一般に使用されるニューストンネットのメッシュサイズが333μm (0.333 mm) であることを認識していながら[3]、5 mmよりも小さい粒子と定義している研究者もいる[4]。
海洋生物がマイクロプラスチック自体と、それに付着した有害物質(PCBやDDTなど)を摂取し[5]、生物濃縮によって海鳥や人間の健康にも影響することが懸念されている[6]。科学的な検証・検討は途上であるが、日本を含めた世界の官民で、発生量抑制や回収を目指す取り組みが始まっている[7]。
マイクロプラスチックは、もちろん我々釣り人だけが原因となって発生しているわけではない。発生源の多くは内陸部で発生するゴミであり、これが河川を通じて洋上に流出することがマイクロプラスチック発生の主因であるとされる。しかしながら、釣り場でのマナー悪化などが叫ばれ、釣り場の閉鎖に追いやられる事案も相次いでいる昨今、我々釣り人は一般の人以上に水域における環境汚染問題には敏感になるべきではないだろうか。
そこで、筆者は提案する。
ラインカッターは爪切りを使おう。それもカバー付きの物を、と。
は?なんじゃそれ?とお思いになるかたもいるだろう。
通常のハサミやラインカッターではラインの切れ端が水面に落ちてしまう。その切れ端はやがてマイクロプラスチックと化す。これを防止するためにカバー付きの爪切りを使うのである。ラインの切れ端はカバーの中に納まり、環境中に直接放出されることはあまりない。
いや、ハサミを使ってもよいのだ。切れ端をその場に捨てさえしなければ。しかし、ラインの切れ端を完璧に管理するのは極めて困難である。落下した切れ端は見失いがちである。また、ぞんざいに扱われがちである。ともすれば、見て見ぬふりをしがちである。友人、知人、子供が見ている前ではなんとなく後ろめたくて切れ端をくるくると丸めてポケットへ入れる。しかしだ。人目がないとき、それとなく風や波のせいにして、なおざりにしていないだろうか。胸に手をあてて考えてほしい。あるいは、何の罪の意識もなく堂々とThrow Awayしている輩もいるかも知れない。言語道断だ。
筆者は、ラインの切れ端が故意でなくともフワッとどこかに飛んでいった時に、子どもと同行している時は横断歩道を渡るのに、子どもが見ていないところではつい横断歩道のない場所をショートカットしてしまうような、 あるいはプールの隅でこっそり用を足すような、あの状況に似た罪悪感に苛まれるのである。カバー付きの爪切りを使えばそんなちょっとした罪悪感から開放され、マイクロプラスチックの低減に微力ながら貢献できる。是非実践していただきたい。
ここで、釣り糸に精通した人なら誰しも疑問に思うことだろう。
爪切りでPEラインはうまく切れないんじゃないのか?と。お察しの通りである。PEラインは編み糸である。したがって、単線合成繊維のナイロンラインやフロロカーボンラインに比べ切りにくいのは否めない。
しかし、これには簡単な改善策がある。
次の写真を見てほしい。これが一般的なラインの切り方だ。
これはフロロカーボンラインの例だ。
パチンとラインを挟み、右に引く。もちろんスパッと切れる。切断の原理はラインカッターと何ら変わりない。
次にPEライン。
普通に切ればこのようにほつれる。
このほつれを防ぐためにはどうすれば良いか。
次の写真を見ていただきたい。
このように斜め上方向に切り上げる。
するとどうだろう。PEラインはほつれることなく切断できる。
フロロカーボンの時より少し力を入れて、しっかり刃と刃を噛み合わせるのがコツだ。
目からウロコではないか。実は爪切りこそが釣り人と海洋環境の救世主、最強のラインカッターだったのだ。お財布にも優しい。気持ちの上でもなんだか清々しい。おばあちゃんに席を譲った時の気分に近い。是非お試しいただきたいのである。ただし、余り糸が長い場合は少々やりにくいし、刃を下に傾ければ切った糸がこぼれ落ちてしまう。この点に注意が必要なのは申し添えておく。
そして最後に、実際問題、カバー付きの爪切りを使用したところで、低減できるマイクロプラスチックなどたかがしれているだろう。しかし先にも述べたように、筆者は、一釣り人として、我々釣り人は海洋環境汚染に関する諸問題には非常に敏感になるべきであるということをこの記事の本質として読者の皆さんに訴えたいのである。